遺言

一緒に生きたい

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

2020年10月24日

午前一時すぎに病院から「ご家族を呼んでください」とおばあちゃんに電話が来て、急いで向かった。夕飯前にも一度、ばあちゃんは呼ばれて居たから、私たちも用意をしていた。帰宅したお父さんにもその旨を伝えたけれど、ひとまず落ち着いたと言うばあちゃん…

綺羅星はハナニラに似て

冬は白。チューブから絞り出した濃厚な白じゃなくて、それを丁寧に丁寧に溶いて薄めた水っぽい白を、何度も何度も塗り重ねたもの。彩度は落ちて、輪郭を失くし、曖昧に拡散していく間もなく、今度は夜に落ちていく 藍の底に沈む手前の、冬らしい空。軽やかな…

秋のこと

やっぱり、傷のことと、一人暮らしのこと、秋や寒さばかり思い出すの 悲しんでいるうちは、まだあの時の私と今の私がおなじものであることが明らかな気がして、安心する。理解出来る。手に取るようには、もう分からなくても、少なくとも忘れ去り、忘れ去られ…

繋ぐもの

九月の二十日頃には新潟に帰って、月末までは、ぼんやりと過ごした。彼と会話するようになったのもこの頃 蛍光灯に縋る昏い八畳間が私の世界のすべてだった …畑さんの名前。なんだっけ。思い返せば名前でなんて呼んだことがなくて。もちろん立場が違うから。…

神様の時間

朝、走るようになってよかったのは、いつ、朝が来るのかわかったこと。 夜は優しくて、世界から私を切り離して、匿ってくれる。だから夜が好き。生きていくために関わらないとならない全てを絶ってくれる けれど夜は朝に殺されて、カーテンの裾から容赦なく…

愛される存在

私は気を許すのが、距離感をうまく取ることが苦手。 どこまで許されてどこまでは許されないのか、その普通が、解らない いいよ、と言われて許されても、これは流石に、というのが。もしかしたら、普通の人なら当然わかることなのかもしれないけれど 1度ダメ…

どうかわらって

穏やかな流れに組み込まれてゆきたいな そこでは私は私である必要なんてなくて 緩やかに、ささやかな幸福を成して回っていく たとえばお腹いっぱいで嬉しい気持ち そしてだんだん眠たくなって、横になると、傾いだ陽が優しく降り注いであったかい そういう柔…

回顧

こんな誰そ彼時の思い出はいくつか 一人きりのアパート、1週間に1日しか外に出ない時もあった カップ麺とグラノーラと紅茶で生きてた 手につかないやるべき事への焦燥感、有り余る虚無をやり過ごすために薬を飲んで泥のように寝た 寝ている時は幸せだった、…

願わくば

私が欲しかったのは痕だった いびつで綺麗な痕 初めて開いた傷は、畑さんのために 破滅へ転がり落ちると解っていても、もうそうするしかできなかったの 何もかもが苦しくて、最早何が苦しいかもわからなくなって、 畑さんが私のことを見てくれる理由になるな…