遺言

一緒に生きたい

どうかわらって

穏やかな流れに組み込まれてゆきたいな

そこでは私は私である必要なんてなくて

緩やかに、ささやかな幸福を成して回っていく

たとえばお腹いっぱいで嬉しい気持ち

そしてだんだん眠たくなって、横になると、傾いだ陽が優しく降り注いであったかい

そういう柔らかな幸福

 

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夜の学食で、食券と引替えに差し出されるおかずをお盆に取る時。いつもなら決まった味噌汁なのにその時はミネストローネと選べた。先の人はどちらがいい?と聞かれ、おばさんが指さしていた奥の食缶を認めて「ミネストローネでお願いします」と答えた。装われたミネストローネを受けとり、私の番。おばさんが同じ質問をしてくる前に、たまらず、好物が選べることが嬉しくて「奥のがいいです」とはしゃいだ。それを見ておばさんがわらって、先の人もわらった。私は気恥ずかしかったけど、なんだかその心地がすごく好くて、うれしかった。閑かで、それぞれがゆったり食事をしてる夜の食堂、片隅、私たちだけこっそり、嫌な理由じゃなくて、なんてこともないことで、わらってる

みんな、わらってる 

何者でもなくて、ただそこにいた、誰か

けれど、穏やかさの一片になれたのがうれしい

みんながわらってると、うれしくなる

私の知らない誰かが、穏やかに、わらっていられたらうれしい

こころが象牙色の幸せでみたされる

私自身の様々なことで悩んでいる時、上手くいかない時、こういう些細なことで泣きたくなる

みんなの幸せをねがうあいだは、私も幸せでいられる気がして

こうしてふんわり、空気に溶けていけたらどれだけいいだろうと思うと、くるしい