遺言

一緒に生きたい

綺羅星はハナニラに似て

冬は白。チューブから絞り出した濃厚な白じゃなくて、それを丁寧に丁寧に溶いて薄めた水っぽい白を、何度も何度も塗り重ねたもの。彩度は落ちて、輪郭を失くし、曖昧に拡散していく間もなく、今度は夜に落ちていく 藍の底に沈む手前の、冬らしい空。軽やかな静けさを帯びた街、大きなガラス窓の奥でテーブルを拭くエプロン、柔らかな橙の光、艶やかなテーブルとチェアの銀。国道に連なるヘッドライトの白テールランプの赤、すべてが、薄氷のような針を幾つものばし、私の涙のうえでおどる

全く、死ぬにふさわしい、美しい白、霧のように淡くも、きんと冴えた空気が果まで明らかにするから、何一つ隠せない 生きているんじゃない。生かされているだけの意地っ張りな私が、与えられた服を着て、寒さから身を守り、当然のように、奇跡を生きている。死を想う贅沢を許されていることも知らないで、我が物顔で感傷に浸る私は、なんて幸せなんだろう

 

選択権はない。批判なんてもとより、意思表示をする権利などないのに、偉そうに……。ねえもう一回言ってごらん、あのつめたい雨の夜に戻りたいか

いやだ、違うの、抱きしめてほしい。手を繋いで、それ以外何も要らない おわかれはいやだ、「わたし」なんでどうでもいいから、私をあいしてほしい