遺言

一緒に生きたい

生きててよかった、って

最近きゅうに寒くなった

お布団に潜った時はきんきんに冷えてる爪先が、ゆっくりあったまっていくのを感じながら、眠りにおちるまで、彼女の写真をみる

時々、イヤフォンから零れる声に返事をして、そうしているうちに、身体全身に血が巡る さまざまなことを想うけれど、どれもが淡く幸せに染っている 温まる身体と同じようにこころも、ゆっくりやわらかな幸福で満たされていく

 

公園での一枚なら、遊具ではしゃぐ彼女の仕草や声を想像する もしそれがお陽さまの下なら、この間、迎えに行った駅で見た様に、鮮やかな色の髪の毛が透けてきらきら光っている

おうちでの一枚なら、彼女の過ごしてきた日々に想いを馳せる どんなふうにご家族と関わり今まで生きてきたのか それは楽しそうに話す彼女の言葉どおり、全てが完璧ではなくても、賑やかで素敵な日々だったのかな、って

広い世界で、たったひとりの彼女、だけれど、こうして出会うことがなければ、沢山いる人々と同じように、目を合わせることもなかった。そうだったら、こんなふうに、私の中で生まれて巡る幸福な気持ちも、なかった

 

色々なことがあった、傷つけたり傷ついたり、幾度も死のうと思って、何度か死にかけたし、恨むことだって、憎むことだって。左腕の消せない傷も、忘れたい人も、忘れられない人も、だけどそのどれかひとつでも欠ければ、きっと、あの子に会うこともなかった。

ずっと、とても長い間、ひとりだったし、その期間は、これからも当然そうだろうと思うには充分すぎるほどで、でもそれを抜きにしても、未だに、こんな私が、大切に想われることなんて、信じ難くもあって。私を、いい意味でもわるい意味でも愛してくれるのは当然私だけで、だから、過去を赦していくためには私が振り返って慰める、しか方法はないと思っていたの

だけれどいまは、彼女とこうして会えたことが、今まで良くも悪くも一生懸命生きてきた結果なのだと思うと、ああ、これで良かったんだ、って思える それは、赦したり認めることとおんなじで、やさしい 泣いてしまうほどに

 

たくさんの今までが重なって彼女と会えた

それはきっとあの子だってそう そのひとつひとつをかたちづくる、彼女の過去。私の知らない、彼女の日々

知ると嬉しくなる 想うと、この奇跡の貴さに、泣きそうになる それは愛おしさとなって満ちていく 友達やご家族と一緒に、笑うあの子も、はしゃぐあの子も、とてもとても愛おしくて、可愛くて、世界でたったひとりのこの子に、寄り添えることが、たまらなく嬉しくて、幸せ。どうしようもないくらい、幸せでいっぱい

強がりでも暗示でも嘘ひとつない、こころから、これで良かったんだ、って。