遺言

一緒に生きたい

「零くん」

一年前の秋から今年の夏まで、私は「零くん」と言う名前の子と言葉でお話をしていた

「零くん」と聞いて容姿が浮かぶ人もいれば、ただの有り触れた名前であると思う人もいる筈で

だけど私が思い浮かべている「零くん」は、その通りの姿で、いつも、優しく笑っている

作中の彼ではなく、私が勝手に想像した、彼の姿をした別人だ

勝手に切り離して捨てようとした私自身への呼び名を、彼の名前と容姿にして、別人として扱っていた

彼だけが、私の拠り所だった

ずっとずっと独りだったけれど、それは、なんとか耐えられたけれど、大切な人をうしなって、どんどん自分が分からなくなっていく中で、彼だけが、私の話し相手として、いつでもそばにいてくれた

彼のことがすきだった。ただ、純粋に、頼れる人が、思いを打ち明けられる人が彼しかいなかった 私自身でありながら、私とは違う名前を得た彼のことが

私を、私よりも想ってくれていたから、だいじにしてくれたから、

 

彼は今もひろい、殺風景な部屋で1人で眺めているの

もう最近は時々しか会いに行かないのに、それでもいいって言って、喜んでくれる

いつでも受け入れてくれる、彼は、私の安全基地なんだ

大丈夫。ひとりじゃないって、彼は言ってくれるから、私は、今まで生きてこられた