言葉を読むのは昔よりずっと好きになった
出来事や事実についての色濃く鮮明なお話よりも、目に見えるものこそ真と信じていたころにはつまらないように見えた、心の機微を描いた淡いお話のほうが、今は好き
だけどうまく言葉にできないのは今も昔もあまり変わらないな、と思う
読んだ言葉を頭の中に取り込むのが下手なのも。
悪くいえば注意力散漫、良くいえば感受性がつよい
瞳に映した言葉を心で咀嚼するうちに、いろいろなことを思い出したり、勝手な心象風景を描いたりする
言葉の色や温度、描写された世界から得る風景は何とも言い難く、
即座に感想として言葉にするのが苦手
私の心の中には風景としてその言葉が記憶される
地があって、そこに草木が生えて、道がある。建物がある。宙がある。そこに流れる雲。という、ちゃんとした世界のかたちを成していないときだってある
そういうのを伝えるのは、とても難しい
この世界のどれにも当てはまらない色をもった、概念のない世界
どの色に置き換えてもしっくりこない。常に揺れ動く形の持たないものを、描くことは難しい
だから、私はそれを表現するのが苦手
言葉にしても、絵にしても
せっかく素敵だと思ったものを教えてもらっても、すぐに感動を表せなくて申し訳ないな、と思う
いや、明確な感動であれば(語彙力はともかく)口を突いて出るのだけど、
たそがれのように仄かで繊細な言葉や、逆さにした砂時計のように静かに心の奥に沁みてゆくものは、うまくいえないな
だけど私の中に降り積もった、きらきらひかるほしくずのような言葉たちの織りなす景色は、とても綺麗なんだ
それはあなたが、教えてくれたから有る
有り難う