遺言

一緒に生きたい

淡く昏いゆめを数えて

歌は気持ちを乗せるし、付随した想いは文章よりも鮮明に明瞭に過去を想起させる

だから私は歌、というものに特別な感情を抱く

歌を喪うと過去も失ってしまう

それは私には耐え難い苦痛で、

いくら丁寧に想いを綴ったとして、音楽に敵うものはないから

或いは、写真。

以前の心理士さんは私の記憶のあり方、

雰囲気という漠然とした事象の覚え方の所以について、光と影に依存すると仰った

そのとおりなんだ

陰影に懐かしさを想う

何気ない日常の風景でも、例えそれがドブの濁った水に射す光芒でも。

些細なそれらが私の雰囲気を構築する

そしてそれが「記憶」として定着する

曖昧な雰囲気などというものに頼って創られる記憶を思い出すのには、同じく曖昧な音楽、それに対する感情の諸々が必要だから

だから喪うのがとてもとてもこわい。

それに、

美しい幸せな時を思い返すにしても、音楽がなければ無理だから

だから私はいかなるときでも音楽を聴き感情を乗せて心に染み込ませ、どうか忘れぬようにと祈って止まない

苦しい想いも同じように

記憶だけが私の存在証明であり、私自身と言える

辛かった時だって、いつも優しく思い出す

あの時はよかった、あの時は辛かった。

それでいいの。忘れてしまったらその時の私は死んでしまうから

精一杯生き抜いた日々さえ忘れてしまったら

私は何一つ報われない