遺言

一緒に生きたい

三年

もう十月なのに未だ蝉が鳴いてる。行き遅れのミンミンゼミ。そういえば新潟では、ジイジイ鳴く蝉の方が多かった気がする。こっちでは専らミンミンゼミ。夏の残滓を思わせるけど、もうとっくに秋。けど、時々は、夏のように暑くなる

十月四日、それから、今日

色々なものに厭きて、一線を越えた

あの頃は夢見が良かった 気を紛らわすように、夢は本物よりもずっとよかった でも必ず目は醒めた カーテンを締め切った薄暗い部屋、ぼうっとして見遣る時計 一人でいると、何もかも物悲しく感じられる そうやって唆されて死に近づいていく 眠りが似ているなら、ひょっとしたらそのまま行けるかもしれない

そんな都合のいい話あるもんか じゃなければとっくに死んでいた 何もかも嫌だったから、腕を切った 明らかな証が欲しかった ざまあみろという証。それももう厭だった

時々ある酷く暑い日、粉末からポカリを作って、ピッチャーを椅子に乗せて、わたしは床に座り、レースカーテンから部屋に射すやわらかな陽を見ていた

外からは色んな音が聞こえてくる 子供の声とブランコのきしむ音…あちらこちらに干された、伸び切って染みだらけの包帯 散らかった部屋 白い壁を照らす乳白色の陽射し 清潔な雰囲気

全く死にたくなるような穏やかさがあって、ひとりというものは、どうしてこんなにきれいなんだろう 言葉にならず身体を巡って研ぎ澄まされる感覚