遺言

一緒に生きたい

歳のせい

庭のぶどうにコスズメの幼虫がいた。色は茶。終齢幼虫。まるまる太っていて、大きさは人差し指くらいかな。ぶどうは父のものだけど、もう収穫も終わり、あとは冬に向けて葉が落ちるだけ。秋に蛹になった幼虫は土の中で越冬するらしい。このまま無事、成虫になってどこか自由に飛んでいけたらいいと思っている。父は虫を見つけるとすぐ、それも喜んで殺生をするけど、私は全く理解できないし、それをかっこいいと思ってるのか知らないが、いい歳して小学生みたいで愚かで気持ち悪いと思ってる。私も虫が怖いから、どうしようもない時は殺虫剤を使ってしまうけど、今はなるべく殺さないで何とかできたら(理想)と思っている……

芋虫毛虫は見た目がどうしても受け付けなくて鳥肌が立つし、絶対見かけたくないし絶っ対に半径5メートル内に居ないで欲しいんだけど、写真とかでは見てしまう。昔、キャベツに付いてたモンシロチョウの幼虫を飼育してた時、既に寄生されていた為、羽化することなく、何か変な卵のようなものを産んで死んでしまったのがトラウマで、飼うことが出来ないでいる……けど、庭には梔子の木があって、毎年たくさんのオオスカシバの幼虫が発生する。

来年の初夏にでも卵を探して、飼ってみたい。幸いオオスカシバは1個ずつ卵を産むらしい。何かの毛虫みたいに卵塊だったらめちゃくちゃ怖いから無理だな……って思っていたので

芋虫の踏めば潰れてしまうような脆弱なからだは、個体数で補っているらしく、なるほどな、と思った。虫なんかは食物連鎖の下っ端だから敵も多い。だから弱くても成長しやすい体の作りを選んで、捕食されても将来子孫を残せるようにたくさん産まれて生き残ると。すごいことだ。怖いけど。

歳をとったせいか、こんな一捻りで殺してしまえるような虫一つでも、一生懸命食べて排泄してこの世界で生きているんだなあと思うと、とても粗末に扱うことなんて出来ないなあ…と言う気持ちになる

でも怖いから、なるべく関わり合いにならず、会うこともなく、お互いひっそり生きて行けたらいいね、と言うのが本当の所

あの子が父に見つかりません様に。ちゃんと成虫になって、羽ばたいていけますように。