遺言

一緒に生きたい

お呪い

レターセットを買った。同じシリーズのものをいくつか買った。早速1通書いた。便箋2枚に封筒は1枚。そんなに書くことがあるだろうかと思ったけれど、成る可く小さい字で書いたものの足りなくて困った。そんなに書くことがあったことに引いた。

何もかも好き、ということは何一つ好きではないのと同じ

好きなところがわからないというのは、嫌いと同じなんじゃないか

という仮定のもと、いやそういう仮定は無くとも、溢れて止まない気持ちを棄て去るために手紙を書き始めた。1通書けば満足出来るという気はしなくて、何セットも買った便箋が終わる前にはどうにかなってほしい。満足というのは満たされる、では無く、切り捨てて空になる事を目標に、気持ちを吐き出していく

「すき」ならば百そう書けば、便箋が黒くなる代わりに私のなかからそれが消えてくれるのではないか、という期待を込めての実験

でも、可視化する事で返ってそれが焼き付いて離れなくなるのではないかという不安もある。もし書いても書いても「すき」だったなら、それは墓迄持って行くべき呪いなのかも知れない

 

なんて、呪い、というと悪いもののように聞こえるかも知れないけれど、すべてが悪いわけではない。受け入れればそれは生き易くするやわらかなまじないに代わるものであり、囚われ怨み続ければ足を掬うのろいになる、全ては心ひとつで

 

どちらにせよ私は、それをのろいにしないためにこうして呪文のように便箋を埋め尽くしては引き出しに仕舞って行く

あなたへ宛てる想いは、哀しいものではない。恨むべきものでもない。黒く焦げた苦いものではない…そう、夜と昼を繋ぐ、赤と青を繋ぐ深く美しい紫のように、私の世界を彩る優しいものだから

想い続けることを、どうか、許して。いつか、忘れてしまう迄は。

私は忘れることでしかこの気持ちを救えない

忘れて仕舞えば、こんなに焦がれた愛おしい時さえ、無かったことになる。それはとても寂しくて、

だけど、それしか、知らない